共通テストドイツ語2024でしばらくドイツ語を学習していないことの皺寄せが来たので、(解説者は如何に納得のいく説明ができるかが重要であり、語学力はそれほど求められない。という言い訳をして)リハビリ代わりに辞書なども使って解説していこうと思います。
2023年度のものはこちらです。
問題
Ⅳ 次の文章を日本語に訳しなさい。
Das Wort „radikal” stammt aus dem Lateinischen und heißt so viel wie „von der Wurzel her”. Radikal zu sein bedeutet im politischen Kontext also, gesellschaftliche und politische Probleme „an der Wurzel” zu fassen und sie von dort aus möglichst umfassend und nachhaltig zu lösen. Allerdings schwingt beim Begriff „radikal” häufig die Bewertung „extremistisch” mit. Doch diese Verknüpfung ist falsch: Extremisten lehnen den demokratischen Verfassungsstaat ab und sie sind in der Regel gewaltbereit. „Radikal” bleibt für viele dennoch ein negativer, provozierender Begriff, den sie mit unkontrollierbaren, plötzlichen Umbrüchen verbinden. Radikale politische Auffassungen haben in der Demokratie aber einen legitimen Platz, so sieht es sogar der deutsche Verfassungsschutz – zumindest solange sie sich nicht gegen die Grundprinzipien dieses Landes richten.
(注)der deutsche Verfassungsschutz:ドイツの連邦憲法擁護庁
Ⅴ
(A) 設問 a)~c)の各文を、かっこ内の指示に従って、ほぼ同じ内容の文に書き換えなさい。
a) Morgen ist der Geburtstag meiner Freundin. Deshalb kaufe ich ein Geschenk für sie.
(weilを用いて一つの文に)
b) Der Kopf tut ihr weh.
(Sieで始まる文に)
c) Die Zugspitze ist der höchste Berg in Deutschland.
(keinと比較級を用いて)
(B) 設問 d), e)の日本語に相当するドイツ語の文を作りなさい。与えられた語句をすべて用い、必要な場合は語形を変化させなさい。ただし、与えられていない語句を用いてはならない。
d) 戦争から戻ったとき,彼はすっかり変わってしまっていた。
als, aus, der Krieg, er, er, kaum, können, man, wiedererkennen, zurückkehren
e) 昨日彼が言ったことが思い出せない。
daran, er, gestern, haben, ich, können, nicht, sagen, sich erinnern, was
解答
Ⅳ 独文和訳
1文ずつ訳していきます。便宜的に番号を付しておきます。
(1) Das Wort „radikal” stammt aus dem Lateinischen und heißt so viel wie „von der Wurzel her”.
„radikal”は英語のradicalを連想してもらえると分かりやすいと思います。ここでは„radikal”という単語について紹介しているので、heißenは「~を意味する」と捉えるとよいと思います。
die Wurzel「根」自体は私は分からず難しかったと思いますが、„von ~ her“「~から」に注目してradical「根本的に、過激な」に繋がる答えを書けるとよいと思います。
なお「過激な」という方の訳を選んだ理由は、次の文章で政治の話が出てくるからです。
★単語
・aus et stammen:~に由来する
・die Wurzel:根
・heißen:①~という名前である、②~という意味である
「radikal(過激な)」という言葉は、ラテン語に由来していて、「根本から」というような意味である。
(2) [Radikal zu sein] bedeutet (im politischen Kontext also), [gesellschaftliche und politische Probleme „an der Wurzel” zu fassen] und [sie von dort aus möglichst umfassend und nachhaltig zu lösen].
いくつも難しい単語が出てきて読むのも苦しくなってきます。
bedeuten「~を意味する」は説明したいことを主語に取るので、Radikal zu seinが主語になります。そして意味の内容はzu不定句が2つ並列して書かれています。2つ目のsieはgesellschaftliche und politische Problemeを表す代名詞としての用法です。
★単語
・bedeuten:~を意味する
・gesellschaftlich:社会的な
・politisch:政治的な
・fassen:~を掴む
・von dort aus:今のところ
・umfassend:広い範囲の
・nachhaltig:後々まで残る
・lösen:解く、解決する
過激でいることは政治的な文脈でも、社会的・政治的な問題を「根で」掴むことや、今のところできる限り広く後々まで影響するように問題を解決することを意味する。
※「過激」という語も本来は政治的にも問題解決に積極的であるという良い意味であることが紹介されています。
(3) Allerdings schwingt beim Begriff „radikal” häufig die Bewertung „extremistisch” mit. Doch diese Verknüpfung ist falsch: Extremisten lehnen den demokratischen Verfassungsstaat ab und sie sind in der Regel gewaltbereit.
この文は特に高度な単語が頻出し、辞書なしには読み進められない難しさでした。構文自体は単純ですが、ひたすら単語の難しさで読解自体を困難にしている文でした。Verknüpfungは「考え」と書いてもよいかもしれません。extremistischは英語のextremeと同じように「極めた」という風に扱うのが分かりやすいと思います。
★単語
・der Begriff:表現
・häufig:頻繁に
・die Bewertung:評価
・extremistisch:極端な
・bei et mit| schwingen:~に共鳴する(→~に付いてくる)
・die Verknüpfung:連想
・ab| lehnen:~を拒否する
・Verfassungsstaat:立憲国家(Verfassung:憲法)
・in der Regel:原則として
・gewaltbereit:力を行使する構えの(die Gewalt:威力…とある界隈ではここから引用した「ゲバ」という用語が使われています)
しかし「極端な」という評価は、頻繁に「過激な」という表現に付いてくる。ただ、この連想は間違っている。極端な過激派は民主主義的な立憲国家を否定し、原則として力を行使する構えである。
※悪い意味を持つ「極端」のイメージが、関係のない「過激」にもついてしまっていることを述べています。
(4) „Radikal” bleibt für viele dennoch ein negativer, provozierender Begriff, den sie mit unkontrollierbaren, plötzlichen Umbrüchen verbinden.
„provozierender”は、動詞provozieren「~を挑発する」の現在分詞形„-d”で形容詞の役割を果たして、形容詞と同じく格変化をしたものです。ただ、„provozieren”自体の意味が難しかったので、変化のことが分かったとしても意味が無いような…
また、難単語のUmbruch「改革」の意味が分からないと後半部分の意味が分からないという問題設計も厳しいように感じました。
★単語
・dennoch:それでもなお
・provozieren:~を誘発する、~を挑発する
・unkontrollierbar:制御不能の
・plötzlich:突然の
・Umbruch:改革(複数形がUmbrücheであり、複数3格で-n)
・verbinden:結びつける
それにも関わらず「過激な」という語は多くの人にとって否定的で挑発的な表現のままであり、抑えることのできない、突然の改革と結びついている。
※前の文で述べた誤解が多くの人々に浸透していることを述べています。
(5) Radikale politische Auffassungen haben in der Demokratie aber einen legitimen Platz, so sieht es sogar der deutsche Verfassungsschutz – zumindest solange sie sich nicht gegen die Grundprinzipien dieses Landes richten.
„Auffassung”以外は難しい単語は無く、単語に関しては(他の文に比べれば)まだマシだったように思えます。しかし、so以降の意味を捉えるのが難しかったです。„es sieht ○○ aus”という文を思い出すと「~のように見える」という意味なので、それに当てはめて考えます。
★単語
・die Auffassung:解釈、見解
・legitim:合法的な、正当な
・der Platz:場所、立場(den ersten Platzで第1位)
・sogar:~さえも
・zumindest:少なくとも
・solange:~する限り[接続詞]
・das Prinzip:原則(複数形は変則的に-ien)
・sich4 richten:向く
過激な政治的な見解は、それでも民主主義の中では合法的な立場を得ており、それゆえにドイツの連邦憲法擁護庁にさえも思える。少なくともこの国の基本原則に反した方向を向かない限り。
※ドイツ連邦憲法ではあらゆる思想の自由が保障されており、その原則を妨げる存在(「極端」)にならなければ罰される対象ではなくむしろ、思想の自由を体現している存在にさえなる、と解釈できます。
Ⅴ 文法
毎年、文法の書き換え問題、並べ替え問題が出てきます。今回はa)~c)は書き換え、d), e)が並べ替えになっていました。b)以外はどうにか初見で解けました。
a) Weil der Geburtstag meiner Freundin morgen ist, kaufe ich ein Geschenk für sie.
[または、Ich kaufe ein Geschenk für meine Freundin, weil ihr Geburtstag morgen ist.]
(明日は私の友人の誕生日だから、私は彼女のために贈り物を買う。)
„deshalb“(それゆえに)や„weil“(~なので)の使い方が問われる問題でした。どちらも因果関係を作るのに使われますが、下の表のようにいくつか違いがあります。同じく因果関係を表すdennも一緒に抑えておきましょう。
この表を見ると、解答のように正しい順番で書けます。(固有名詞→代名詞の順番を守るならば)②の書き方のほうが格変化を考えることが無くて簡単になります。
参考までに„der Geburtstag meiner Freundin”という部分で、„meiner Freundin”は2格で„der Geburtstag”を修飾する役割を持ちます。
単語 | 因果の順番 | 用法 | 似た単語 |
---|---|---|---|
denn(というのは) | (結果), denn (理由) →dennには理由が付く | dennは並列の接続詞なので、語順変化なし | |
weil(~なので) | ①(結果), weil (理由) ②Weil (理由), (結果) →weilには理由が付く | weilは従属の接続詞なので、定形後置 weilが先にくる場合は、後半部分の主文が動詞から始まる(定型第2位)。 | da |
deshalb(それゆえに) | (理由), deshalb (結果) →deshalbには結果が付く | deshalbは副詞なので、定形第2位 | deswegen so |
b) Sie hat Kopfschmerzen.
(彼女は頭痛です。)
最初に見たときは「?」という感想しか出てこなくて、似た表現を出すのに苦労する問題です。元の„Der Kopf tut ihr weh”.という表現が直訳風には「頭が彼女に痛みを与える」という感じなので、問題文の指示通りに人を主語にすると「彼女は頭痛を持っている」的な文を書ければよいということになります。
★単語
・(部位) tun jm3 weh:jmにとって(部位)が痛む
・Kopfschmerzen:頭痛(Kopf頭と、Schmerzen痛みの合成語)
c) Kein Berg in Deutschland ist höher als die Zugspitze.
(ツークシュピッツェ山よりも高い山はドイツにない。)
英語の比較級の勉強で出てくる「無>最高のもの」構文のドイツ語版です。絵で表すとこのようになります。
今回は„kein”を用いよと書いてあったので「無」の存在を引き出すヒントになりました。
また他にも注意する部分があり、それは„hoch”の原級-比較級-最上級が不規則変化をするということで、hoch-höher-höchstと変化します。höherではcが抜けることに注意が必要です。
d) Man konnte kaum ihn wiedererkennen, als er aus dem Krieg zurückkehren hatte.
(戦争から戻ったとき,彼はすっかり変わってしまっていた。)
「彼はすっかり変わってしまっていた」の部分を語群から「彼」が主語にくると思い込みどう書くか分かりませんでしたが、manの存在で「(人が)彼をほぼ再認識できなかった」と考えればいいのか!となりました。
„kaum“は「ほとんど~ない」という文自体を否定的にする副詞です。「【2021】東大差し替えドイツ語を差し替え成功者と見る」のⅤのc)でも„kaum”は出題されているので要確認です。
„als”(~するとき)は従属の接続詞なので、定形後置になることに注意しましょう。そして主文が過去形なので、副文内の完了形は過去完了へと時制の一致が起こることにも注意が必要です。
不規則動詞に不安のある人は下の記事もおすすめです。
e) Ich kann nicht mich daran erinnern, was er gestern sagen hat.
(昨日彼が言ったことが思い出せない。)
「~を思い出す」という表現は重要で„sich4 an et4 erinnern“で表したり、「~を思い出させる」„jn4 an et4 erinnern“の受動態で表します。今回はanで受ける対象がwas以降の句であるため、一旦前置きのesを置いておきます。そしてanとesが合わさってdaranと変化します。
共通テストドイツ語ですが、「【2024本試】共通テストドイツ語を差し替え成功者と見る」の第3問の問2でも同様の変化を扱っているため、差し替え受験者は確認しておきたい問題です。
„was”(~するもの)は従属の疑問詞なので、定形後置になることに注意しましょう。
2024差し替えドイツ語まとめ
Ⅳの和訳問題は、専門分野に関わる単語が多く非常に難しかったです。この難しさでは、英語に加えてドイツ語まで勉強している人が損しているような…
Ⅴの文法問題の方では、定形後置が影響する問題が3/5の6割も出題され、依然として定形後置が重要であることが示されたほか、b), d)のように表現の言いかえを求める出題があったことが目新しいです。