想像と違うところ
①数学・物理・化学よりも圧倒的に生物の内容が多い
落ち着いて考えてみると人体について学習するので、数学や物理・化学よりは、断然生物の内容の発展が多いです。受験時には理科は物理・化学の組み合わせで受けた人が多く、入学後になって慣れている数学・物理・化学を手放して、不慣れな生物を押し付けられるという状況を受け入れがたい場合もあります。
反対に、受験で生物を使った人は一部の医学科科目で既知の内容があって負担が軽くなったと言います。生体内の分子機構の大枠は掴めているので、細かい分子名を覚えるくらいでしょうか。
さらに内容自身というよりも生物の問題の考え方が身に付いているため、期末試験のような問題を解くということへの慣れも大きいです。
なお、数学・物理・化学は教養科目の内は活躍する場面が多いので完全に忘れてしまうことは無いようにしましょう。しかも、せっかく勉強したものが無くなってしまうのも悲しいし
②実習が多い
医者のイメージからして、実習は解剖と診療技術くらいしか無く、他はひたすら講義=暗記があると思っていました。しかし、微生物や免疫などについての実験もあって、生物学科のような印象を受けました。
多くの臨床に進む人からすると生物学科寄りの実習は賛否が分かれる内容です。レポートもあるし
他の理系学科よりも良い点
①のメリットが非常に大きいです。その恩恵のために次の項目「他の理系学科よりも悪い点」の数多くの困難を耐え忍ぶといっても過言ではありません。
学生・研修医の8年間を我慢してその後恩恵にあずかるか、あるいは学生のときは楽して新卒から定年まで不安に駆られながら働くか、どちらを選びますか?
①医師は独占業務なので働き方が自由
3大国家資格である医師・弁護士・会計士の内、医師資格はそもそも医学科卒業でないと受験資格すら与えられないものになります。そして、医師は独占業務であり資格のないものは業務に参入することが許されません。実際ハードルは高い(入学→進級→卒業・国試合格)ですが、その分不幸中の幸いで大量の人と就職で競い合うような状況ではないです(倍率が高い例:外資系、商社、マスコミ)。
さらにメリットがあるのは新卒時のみではありません。一般のサラリーマンでは転職は厳しいですが、医師では転職はもちろん、労働形態も比較的融通を効かせられます!
週1回の医師アルバイトで並のサラリーマン並みの収入を得ている医師の話をOBから聞きました
②卒業論文が無い
通常の理系学生・院生が卒論や研究室について嘆いていたりする一方、医学生は(院や自主的に研究室所属をしない限り)卒論は存在しません。そのため、自由研究や自由にテーマを決めて書くレポートの類が苦手な方にはお勧めです。
ただし大学(特に私立)によっては、卒業試験を課して医師国家試験受験者を上位の人に絞り込んで、見た目の合格率を高くするという調整が行われていますので、よく調査をするとよいでしょう。
他の理系学科よりも悪い点
下に複数の欠点を述べましたが、いくつかの要素が複合してさらに厄介になることもありますのでご注意を。
①暗記要素が多く、創造要素が少ない
医学の勉強は「退屈」「大量」「耐久」という”3T”で表されるように、極限修行のようなものです。医学科に入る=出家するという覚悟が必要です。
通常の理系学科の勉強では、受験物理の勉強に代表されるような、数少ない法則から自然界のあらゆる未知の現象を解き明かすというような「一目で広範囲を眺める」というものが多いです。しかし、医学科では「既に理由も分からずに存在している対象をそのまま覚えさせられる」作業を何百、何千、何万と行うものが多いです。
さらに質が悪いことに後述の④の通りに全科目必修であるため、逃げることができません。
②長期休みが短い
「普通」ですと夏休み・春休みは2か月以上あります。しかし、医学科では長期休みが短くなってしまいます。ただでさえストレスの溜まる生活が長くなって余計にストレスが溜まります。参考までに東大でのデータを示します。
学年 | 夏休み | (次の学年までの)春休み | 備考 |
1 | 2か月 | 2か月 | 教養学部 |
2 | 2か月 | 2か月半 | 前半までは教養学部 |
3 | 1か月 | 0.5か月~2.5か月 | 春休みはフリークオーターの負担による |
4 | 1か月 | 無し | 1月から病院実習 |
5 | 1か月 | 無し | 夏休みはマッチング希望病院の見学等で潰れる |
6 | 1か月 | 国試前後に4か月 | 夏休みはマッチング試験で潰れる 年内まで病院実習 |
③国家試験のための勉強が必要
医学科というものは入学できれば終わりというものではありません(重要)。6年生の終わりに医師国家試験があることは有名ですが、近年ではその他にも4年生のCBT(医学部共用試験)、OSCE(実技)などを突破するために、学校の定期試験とは別に積み重ねが必要です。
国家試験に受からないと医師になれない、これ常識
充分な学力が無いのに「裏口入学」するのは、お話にならない
(入学は寄付・権力等でどうにかできても、国家試験では通用しない)
④全科目必修で変わり映えがしない
大学というと楽単ばかりを履修して、大きい教室で授業が行われて、人数も多く、人によって履修している授業も違うため、授業のたびに人が全く違って知り合い以外は誰が誰だか分からない状態が普通です。
それに対して医学科は比較的少人数(1学年100人程度)で全授業が必修であるため、授業を必要・興味に合わせて取ることもできず、人によっては大して仲良くもないがお互い認識はしている程度の人と頻繁に顔を合わせるのが苦痛というデメリットもあります。
⑤ただでさえ忙しいのに非効率なことが多い
全科目必修でかつ国家試験などのためにやることが多いだけでも大変です。これに加えて、医師になる上では必ずしも必要ではないことを強要されます。以下に例を挙げます。
- わざわざ短時間の用事のために授業の無い日に呼び出される
- 単なる講義で出席を取るものがある
- 基礎医学が必要以上に幅を利かせている
(※普通の人が想像する医学(診療で必要とされるもの)が臨床医学と呼ばれるもので、基礎医学は生物学に近い内容で、一部のみが臨床医学の基になっています。)
基礎医学の不要な部分を大幅削減するだけでも、6年制→5年制くらいにはできそうなんだけど、利権が絡んでいたりするのかな
⑥6年間かかる
ご存じの方も多いように、医学科・薬学科・獣医学科は6年制です。それゆえ、学費が余計にかかる、収入が得られるのが遅くなる、などのデメリットも生じます。それに加えて、①~⑤の苦痛がより長い期間続くということも特筆すべき点です。
医学科に向いている人・他分野の方が向いている人
医学科に向いている人
- 就職・高収入を確実にしたい人
- 自分で行動を決められない人
- 暗記が得意な人
他分野の方が向いている人
- 枠組みにとらわれたくない人
- 天才(→起業・海外就職)
- コミュニケーション上手な人・体育会系(→勉強なんかしないでも就活は楽勝なので文系がおススメ)
- 集合体恐怖症の人(顕微鏡を使うたびに絶望します)
- 暗記が苦手な人