もちろん受験生は行きたい大学のために勉強してきたので、仮にも不合格であった場合でも当然未練は残ります。ただ、周りの人は大学に進学するので自分も進学しないといけないという焦りも生じます。それを見事に解決する手段が「仮面浪人」です。
「仮面浪人」の生態を、 経験者が語ります。仮面浪人の長所・短所も明らかになり、 第一志望に落ちてしまった方は必見の記事です。
1,浪人の種類について
大学は現役で第一志望に合格するに越したことはない ですが、仮にも第一志望に不合格となった場合について考えてみましょう。
- 1純粋な浪人をするか?(予備校または自宅浪人)
もし、一応大学には進みたくて「いいえ」なら次へ
- 2第二志望以下の大学に進学
そのまま定着するか?(理系ならば院進で第一志望の大学院を目指すか?)もし、第一志望の大学を諦めきれずに「いいえ」なら次へ
- 3大学に在籍しながら、第一志望の大学に向けて受験勉強をする(これを「仮面浪人」と呼ぶ)
この記事では仮面浪人について扱います。
2,なぜ仮面浪人をしたのか
筆者の経歴は、非進学校→早慶文系→東大理系です。
滑り止めで入った大学の入学直後は新生活の目新しさと多忙さによって、勉強とは一切の縁を切って卒業すると頭の片隅では多少思ってはいました。しかし、
- 大学生活や卒業後での内部生と外部生の待遇の差
を実感し、自分はさらに高みを目指さなくてはならないと思ってから、再度東大受験を志しました。
これに付随する小さな理由としては、
- 専門科目が自分に合わないし、理系がよかった(私立理系は環境と学費の面から候補外)
- せっかく勉強した理科2科目、古典、センター社会が無駄にならないようにしたい
- 学費が安い
というのもありました。
3,仮面浪人の長所 ~裏技もあり
仮面浪人は、予備校浪人などに比べて魅力的な点がたくさんあります。
①失敗した場合には卒業年度に遅れが出ない
本人が仮面浪人をする場合でも、親御さんが(純浪を止めて)仮面浪人を勧める場合でも、必ず出る理由がこれです。
仮に失敗した場合、大学のレベルこそ目標よりも下がってしまいますが、(留年さえしなければ)「ストレート卒業」ができて、就活でプラスになることになります。
②大学生活・授業が気分転換になる
いくら受験勉強で忙しいからと言って、それだけをやっていたのでは「緩急」が無く内容の身につき方がよくなくなります。なので、頭脳に受験勉強をしている時とは異なる影響を与えるのに、大学に通うことは適しています。
また大学の授業も、ものによっては新しい知見が得られたり、入試に役立つようなものもあります。例えば、私立文系向けの一般教養の物理・化学(・生物)です。この授業では、大学で教鞭をとられている先生が高校レベル~大学レベルの理科の講義と実験を隔週で行うため、元理系でも楽しめると思います。
③入試で裏技が使いやすくなる その1
②の延長線上の話ですが、これはとても伝えたい内容です!
まずは大学の科目名でいう「統計学」。これは高校数学Bの「確率分布と統計的な推測」の発展版にあたります。
すると、センター試験・共通テストの数学②(数学ⅡB)の選択問題で、普通は自動的に数列・ベクトルを解く必要が出ますが、数列・ベクトル・統計の中から2つを解答すればよいので、どれかが分からない、時間がかかるときの保険が作れます。
④入試で裏技が使いやすくなる その2 (←重要)
次が「第二外国語」。これはピンとこない方が多いのではないでしょうか?
なぜなら、入試の「外国語」の試験において英語以外は注目されないからです。 しかし、まだまだ大学受験としては未開拓の分野であるため、不安に感じることはありますがメリットが大きいです。
開拓し尽くされた分野ほど求められるレベルも高くなる。これ世界の常識
裏を返せば、ニッチな分野ほどレベルが標準程度で抑えられている、ということか…
候補となる外国語ですが、それはズバリ
- ドイツ語
- フランス語
共通テストや東大の受験案内には、ドイツ語・フランス語・中国語・朝鮮韓国語(東大は一部差し替えのみ)が掲載されていますが、 中国語・朝鮮語は初習者の差し替えには向いていません。
なぜならば、日本に一定数の習熟者の方がいるため、問題のレベルも彼らに合わせて作られていて、 太刀打ちできないからです。
ここで、「(一部)差し替えって何ですか?」 という方がいらっしゃると思います。
具体的なメリットとしては、
- 大学の授業も入試に直結するため、勉強意欲が出て単位取得も楽に感じる
- 東大の差し替えで、大幅な時間短縮(英語は約7ページ→第二外国語で2ページ)と比較的高得点(和訳と文法なのでブレがない)を狙える
- 共通テストで、ほとんどの英語選択者が行う「リスニング」を受験する必要がなく1日目に早く帰宅可
そのため、東大不合格が決定してから入学大学の言語選択までの間に仮面浪人を決意した方は、特別な事情がない限り、ドイツ語かフランス語にしましょう。
私はドイツ語で一部差し替えで受験したので、これについて詳しく別に記事を書きます。
また、分量の少なさについては、次の記事の問題を見てみてください。
4,仮面浪人の短所
仮面浪人については経験者から否定的に言われることが多く、原因は以下のようであると推測されます。しかし、私からすればそれらは結局は改善可能であったり、予備校浪人でも変わらないケースが多いため、成功者が否定的に言うことは構いませんが、失敗者が言った場合、SNSばかりやって失敗した負け犬の自業自得に過ぎないと考えています。
①失敗した場合の損失が大きい
これは言わずもがなです。1年間でできたはずのことはたくさんあったでしょう。 私立文系ならば、難関資格取得をしなければ、コネなどのない人は就職で門前払いです。
しかし、純浪も条件は同じである上に、卒業が1年遅くなることを考えれば、 仮面浪人の方がまだ条件は良いです。
②純浪に比べて費用が掛かる
費用の掛かる順番としては、仮面浪人≧予備校浪人>自宅浪人(宅浪)の順番です(1番目と2番目は場合によっては逆転あり)。 そのため、仮面浪人をしていて学費を他の方に支払ってもらっている人は、ちゃんと感謝し、くれぐれも勉強をさぼってSNS上に長時間滞在している人のようになってはいけません。
③時間が足りない時期がある
受験勉強と他のことを同時並行でやっていたら、まあそんなこともあります。 危ない時期は、7月末~8月頭(1学期末試験→東大模試)と、1月(共通テスト+2学期末試験)です。 運が良ければ共通テストが終わった後に期末試験になるかもしれませんが、 運が悪ければ重なってしまいます。
しかし、現役のころを思い出してみてください。高校で関係ない科目の授業や定期試験までも当然、遅刻・欠席無くこなしていました。 その頃から成長していれば、同時並行で物事はこなせます。
仮面浪人はフル単(すべての単位を取得すること)以外お話にならない
④他の人に言うか言わないかの問題
これはなかなか勉強環境に関わる大きな問題です。この問題に悩んだままでは勉強が進みません。
答えとしては、家族や大学などの親しい友人(顔見知り程度は除く)にのみは伝えた方がよいでしょう。 しかし、いつどのように言うかという問題が生じますが、それはできる限り早い方がよいでしょう。 支援を勝ち取れることもあるからです(もちろんお返しはしましょう)。
そういえば、大学の友人が共通テストと東大入試当日にLINEで応援メッセージを送ってくれたりしたことだ。ありがとう、同志たち。
5,まとめ
今回の記事では、仮面浪人について扱いました。
- 「仮面浪人」とは、他大学に通って単位を取りながら、第一希望の大学を再受験すること。
- 仮面浪人には長所・短所があるが、短所は改善可能であったり、他の方法でもいずれ不可避である。
- 仮面浪人は受験で「裏技」を使える可能性を秘めている。
- 大学の第二外国語でドイツ語・フランス語であれば、東大の差し替え受験で大きな効力を発揮する。(ドイツ語の詳細は下の記事)